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文章には字形の評価がある。夏になると路端に咲くあの黄色い花を「タンポポ」と書くのと「蒲公英」と書くのでは随分イメージが違うし、「住処」と「住み処」では後者の方が「すみか」という読みの閃きやすい反面、表現としてはやや砕けた雰囲気を醸している。複合語はさらに複雑だ。「めぐりあい」は果して何通りの表記が可能だろうか。▼一方で語調の評価がある。めぐりあいをどう表記するかより前に、出会い、めぐりあい、邂逅、いずれを選ぶべきかということであり、あるいは死した人間を死体(したい)と書くか屍(しかばね)と書くか亡骸(なきがら)と書くかということであり、つまりは実際に文を発声してみたときの口当たりのよさを比べてみることである。▼視覚と聴覚。文章を読むにはどちらの働きも必要だ。人は黙読しつつ音読している。書くものは時と場合によって内容や意味そのもの以上に、文章の見た目と読みを重視しなければならないことがある。
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