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「君は按摩ができるか」と松下幸之助は訊く。「できません」「お父さんやお母さんの肩を揉んであげることはないのか」「はあ、あまりしたことありません」「それでは君は、あまり出世できんぞ」▼怪訝な顔をする青年社員に、幸之助は笑って言った。「たとえば君が課長と一緒に夜遅くまで残業したとする。君は若いから元気でも、年輩の課長には疲れが感じられることもあるだろう。そんな時に、『課長、ひとつ肩でも揉みましょうか』ということが言えるかどうか――もし君がそういうことを一言、ふっと言ってあげたら、それはどれだけ課長の慰めとなることか」▼研究室にひとり、気の利き過ぎるくらい利く後輩がいた。傍で見ていても感心するほどで、今でも心証は抜群にいい。なるほどそういうものだなと思う。あくどく見えないか、クールに構えていた方がいいのではないか、そんなことを思い悩む一瞬の隙に、目上の人を助ける手がさっと伸びることの人間らしさ。
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