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「さまざまな民族の習俗について何がしかの知識を得るのは、われわれの習俗の判断をいっそう健全なものにするためにも良いことだし、またどこの習俗も見たことのない人たちがやりがちなように、自分たちの流儀に反するものはすべてこっけいで理性にそむいたものと考えたりしないためにも、良いことだ。」デカルトに限らず、書物を旅に喩える名言は多い。▼読書が旅なら、過去の書物を読むことは他の世紀の人々と交わることだ。いまはなき幻の国を旅する、読書という仮想のファンタジー体験――などと大仰なことを言うつもりもないが、しかし放浪趣味でもない限りは旅に出たきり帰らないわけにもいかぬ。「いま・ここ・わたし」に還元できない読書は無駄だとショウペンハウエルは言った。あまりの楽しさに我を忘れて、ただただ楽しいということにはならないようにしたい。「けれども旅にあまり多く時間を費やすと、しまいには自分の国で異邦人になってしまう。」
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