400
Post/Edit Page
たまたま講義のなくなったときなど、よく冒険気分で大学の書庫に潜っていた。学生証を入室キーにじぶたれた錆階段を登っていくと、薄暗い書棚が遥かな涯までつづいている。そうして私のまわりだけ、小さく灯りが点くのだ。いつお化けが出てもおかしくないなと思っていた。怖がりの私が唯一ひとりで歩けた暗がりでもある。▼もともと本を借りるのが嫌いで、滅多なことでは図書館など行かない私だったが、大学図書館にだけはさすがにいろいろお世話になった。値段の張る全集や超豪華本は言うに及ばず、絶版になって久しく買うに買えない本というものもある。そういうものは出来るだけ入れるうちに読んでおこうと思って、潜入のたびに「戦利品」を紙袋へ詰めてきたものだ。今でもしばしば行きたいと思う。今度行ったら卒業生カードを作ろう。あるかないかもわからない神田界隈を足を棒にして歩くくらいなら、あるとわかっている書庫から借りてきたい無精者である。
pass:
Draft