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零時を過ぎても街に人はあふれている。駅辺のベンチでは、散歩途中らしい親爺さんが茶色い大きな犬と見つめ合っている。反対側では段差程度の石段に腰掛けて、スーツ姿の男が携帯電話に向かって怒鳴り散らしている。リュックサックを背負ってふらふらと歩いていく男の背中が見える。コンビニの中では電車を降りたばかりの人たちが、夜に似合わぬ忙しなさで買い物をしている。▼なぜだか急に、久々、ほんものらしい人間の絵を見た気がした。ふだんの人間がにせものというわけじゃないが、昼の人間図の美しさはこれにくらべれば遥かに機能美だ。それは働いている人間の美しさである。狩りをしている動物の美しさである。そういう機能美とは違う、いかにもこれが人間というような絵。▼空は藍一色に星一点、ああいうのを一点というのだ。ほんとうにひとつだけ、ぽつんと穴の開いたように黄色くちらついていた。それを、野人と罪人の相の子めいた気持ちで見ていた。
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