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強烈に叩かれたピアノの低音は何かを破壊している、と同時に何かを創造している。何かとはなんだろう。音楽的な何かだろう。極低音ピアノのロングトーンで終わる曲が使い古された定形ながらも心地良いのは、終了の宣言と同時に何かを創造しているからという気がする。倍音を無限に含んだ主音が響く。譜面にないその先が聞こえる。聴こえないものが聞こえてくる。▼曲の向こうへ連れていくような音。そういえば理想的な小説の終わり方は、小説の外への加速度を持った終わり方だと何かで読んだことがある。文章についての話で、長い小説の最後へいかにも完結した動作を持ってくるのは、まずよろしくないピリオドの打ち方だというのだ。「ぐっとアクセルを踏み込んだ。」なるほどたしかに、行く末を想像させられるものがある。結果のない動詞は、読者を話の外へ連れて行く。終わらない低音は、聴き手を曲の外へ連れて行く。秀逸な最後は、そっと手をとってくれる。
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