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暗い夜の遊歩道を上ってくると、突然こつんと何か硬いものが足元に投げ込まれた。驚いて見ると、それは薄緑色をした植物の実であった。かがみこんでみることもせず通り過ぎたから、暗がりの中で何の実かはわからなかった。▼私はあるひとつのことが気になっていた。実は投げ込まれたのではなく落ちただけであったことにほっとしたあとで、何にほっとしているのかよくわからなくなったのだ。たしかに誰のいたずらでもなかった。我が身を脅かす危険人物もいなかった。けれども何かの実はたしかに放り込まれたのではなかったか。何かの植物によって。▼ふいに四方を取り巻く植物の群れが恐ろしいものにみえた。幻覚病者はしばしば、身近なものが自分を脅かしに来る錯覚を見るそうだ。私はいつも、植物の形ほど不気味なものはないと思っている。なんて気味の悪いやつらだろうと思っている。だから仕返しをされたのかもしれない。そう思って、少しだけ帰路を急いだ。
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