400
Post/Edit Page
「昔去るとき、雪、花の如し。今来たれば、花、雪に似たり。」この暮らしではもう昔のようにのんびりと詩を読んだり書いたりできないな、とつくづく思って、帰りしなに漢詩大辞典をぱらぱらめくった。懐かしい字面に出会っては、こんなものもあったなと思うばかりで、書き下しも解説も頭に入ってこない。漢字の上を視線がなぞっていくばかりだ。そうしているうちに、冒頭の五言絶句が見えた。范雲の作である。▼あらためて素直にいい句だと思った。自分が素直に感心する珍しさを知っているから、素直に感心することはいちばん深く感心することだと、そう思っている。こういう単純実直な比喩は、言葉だけの世界からはなかなか生まれてこないものだ。自然の見所をうまく捉えて、そのまま結晶している。職人技である。もっとも、しばらくぶりに漢詩に触れて、ちょうど彼と似たような気持ちを抱いていたなら、その分だけ贔屓目に見ていたところはあるかもしれない。
pass:
Draft