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なんの因果か、エリック・サティのヴェクサシオンを聴いている。まったく聴くに耐えないと二週目で投げ出す人も入れば、いや聴き出すとどういうわけか離れられなくなる、などといって延々聴く人もいる。私はいま繰り返しているが、どうやら単純に繰り返すということの気持よさだけでそうしているらしい。不思議な魅力などというものは一切ないと思う。なんのことはない、正真正銘の嫌がらせである。▼「このモチーフを840回繰り返し演奏するにはあらかじめ、深い沈黙と真剣な不動の姿勢で心の準備をすると良い。」サティは作曲ノートにこう付記しているそうだ。そこには、まったく同じように繰り返せという指示はない。深い沈黙と真剣な不動の姿勢で臨めとあるだけだ。サティがもしヴェクサシオンに嫌がらせ以上の意味を込めたなら、これを演奏することの真価は、まさに演奏前の瞑想にあるのだろう。音となる前に真価のある稀有な曲、と考えてみても面白い。
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