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色と音はどちらが文章に近いか。▼河上徹太郎がこんなことを言っていた。色と文章は視覚的である。音楽は空間的である。こういう対比からは、色の方が文章のように近そうだと思える。「赤」や「青」は純粋に言葉そのものだが、ヴァイオリンの音色とか、「中央のド」とかいうものは、概念の力を借りなければ表現できない。けれども音は流れることに意味がある。言葉もそうだ、流れて文章となるところに命がある。してみると流れるという状態を本質とするところ、案外音のほうが言葉に近いのではないだろうか?▼光のない世界にも言葉はあるかもしれないが、音のない世界に言葉は生まれない。そんなふうに思う。音楽はもともと歌であった。文章もまた声であった。言語の黎明期、これら口を通じて思惑を表現する手段に明確な隔たりはなかっただろう。流れていくような文章を音楽的な文章だと言うのは、ただその言葉面から生じた安易な連想というわけでもあるまい。
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