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人の霊魂を「魂魄」という。魂魄はひとつの概念ではなく、魂(こん)と魄(はく)が合わさったものだ。魂は「みたま」であり、心の統制を司る霊魂の精神的な側面である。魂は宿主を成長させていく。仕事や作品に込める「たましい」はこれであろう。魄は「みかげ」であり、身体の様相を司る肉体的な側面である。魄は人の姿形や容貌を整える。落魄とは見てくれが落ちぶれることだ。「落魄江湖載酒行」も身分の零落ばかりを表現しているわけではないだろう。▼魂魄は表裏一体である。魄を疎かにすれば魂は荒み、魂のつかれは魄のやつれに現れる。心は見えぬというが、なんのことはない、見えない心の代わりに顔色があるのだ。ただ自分では窺いにくいから、大抵の場合、鋭敏な他人に見つけてもらうのである。「最近、元気ないね?」そのとき彼は、たしかに見てくれを見ている。見てくれしか見ていないに違いない。そうして人は、自分が落魄していることを悟るのだ。
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