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「どうすれば小説家になれますか。」作家のタマゴが相談に来ると、ル=グウィンは決まってこう答えたという。「まず書くことです。」タマゴは憤慨して言う。「でも何か書くためには、経験を積まなくちゃ……」グウィンは嘆息する。ジャーナリストになりたいのならそうかもしれない。けれど小説家に必要なものは、ただひとつ「想像力」だけ。経験という言葉を持ち出すのは、書くのが恐ろしいための言い訳にすぎない。▼そうかな、経験が支える想像力もあるじゃないか――こう言い出したら、たぶんこの話は有耶無耶になる。けれども「書くことです」という彼女の言葉が、物書きにとっていちばん恐ろしい真実であることに変わりはない。暇さえあればノートに落書きをしていたような人は、やはり巧い絵を書くものだ。巧いから描いていたのか、描いていたから巧いのか、わからないが、ただ描いていたという事実だけがある。そして彼は、絵描きになれるかもしれない。
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