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「ひやひやいう鳥の声」と書いたことがある。以来気に入っている音のひとつだが、私はそのとき、何も考えずにこの擬音をつかったと思う。なぜひやひやと思ったのだろう。そう改めて考えたのは、今しがた電車を降りて遊歩道へ出ると、虫の音がイヤホン越しに聞こえてきたからだった。びぃびぃ、ぴぃぴぃ、そういう音である。ふとひやひやと比較してみたのだった。▼鳥の声に比べれば、虫の音は実にリズムだ。いつまでつづくのかと思うほど、機械かなにかのように同じ音程を繰り返している。びぃびぃ、ぴぃぴぃ。ところで、ひやひやという音は音程を変えなければ発声できないのだ。無理やり同じにすれば、それはもう鳥の声の擬音にならない。なるほど鳥の声は音程か、メロディか、だからひやひやいうのか、そんなふうに思った。メロディの美しさに魅入られて、律動の原始的な力を疎かにしていたこのごろ、ふいに反省した。虫がいなければ、鳥は生きては行けない。
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