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夢を見ていた。しばらく夢など見ていなかったこのごろ、椅子の上の眠りは浅い。夢のなかで出会う景色や言葉は、何もかも輪郭がぼんやりしていて、ふつうすぐに忘れてしまうけれど、不思議と目覚めてもはっきり覚えているのは建物である。現実に訪ねたこともないような建築物が、外観から内部構造まで手に取るように思い出せるのだ。七階が駅舎とつながっていた。右手のコンサートホールがトレードマーク。▼一方、夢のなかで音楽を聴くことはまずない。知っているものも、知らないものも――どうやら私の夢に音の入ってくる余地はないようだ。視覚と違って聴覚の刺激は即覚醒に繋がりそうだから、もともと夢というものが音を容れる性質のものではないのかもしれない。それにしても「建築は凍れる音楽である」という言葉を思えば、この対照はなんだか面白い。夢の世界で耳が音楽を聴けない代わりに目が建築を見ているのかもしれぬ。あの建物は何かの音楽なのか?
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