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今年は熊がよく出るという。この夏は稀に見る猛暑だったから、森に食料が少ないのだろう。冬眠前の親熊が、家探しにやってくる。▼都会で熊が出れば大騒ぎだ。ところで狐はどうだろうか。熊のニュースを聞いて、私はふと狐という動物の不思議さについて考えはじめた。犬や猫を都会で見ても特別な感慨はないし、熊や猪を見れば大事件だが、狐だと妙な感じがする。六本木ヒルズには似合わないが、ちょっと手入れの届いていない郊外の林になら居てもいいという気がする。少なくとも、そんな自然を背にした絵姿がよく似合う。そうして「ここから先は人間の世界ではない」と警告でもするように、じっとこちらを見ている。なるほど狐はしばしば人里へやってくるが、その狐の逃げていく先は必ず異世界なのだ。多くの狐伝承はそういうつくりに仕上がっている。人を化かすという、遠いようで近しいような扱い。その絶妙の距離感。狐は「境界の生き物」なのかもしれない。
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