400
Post/Edit Page
薄いジャケット越しに刺さる今日の寒さは実に晩秋らしいが、晩秋というのはもう秋も終わりそうだという感慨なのに、つくづく始まった覚えもなくて、これではとても行く秋などとは言えまい、来なかったものをどうやって惜しもうか、思えば今年は冬と夏のあいだも無かったし、こうしてまた夏と冬のあいだも無いのなら、日本もいよいよ二季制か、暑いと寒いしか不満を言わなくなれば、この国の人心もいよいよ世知辛くなるだろう、などと徒然思いながら、冷たい遊歩道を歩いてきた。▼夜中はコートさえ欲しい寒さだが、日中はまだ暖かい。今日は室内で汗もかいた。冬と秋とでしばしば秋の方が肌寒く感じるのは、この較差によるのである。そうしてぐっと気温の下がった夜のひやりが朝まで伸びてくると、ぬくい布団が恋しくなり、朝食に吸い物が欲しくなり、硝子越しの陽の光がうれしくなる。冬こそ暖かみの風情である。「朝寒の膝に日当る電車かな」とは、柴田宵曲。
pass:
Draft