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ある准教授が言っていた。スタンフォード大学のドクターで研究をしていたとき、いまの自分の研究スタイルを築き上げた忘れられない出来事があるという。▼当時、同じ研究室にテーマの近い後輩がいた。成果物は似たものになると予想されたから、表向きは歩みをあわせるようでも、実際のところ研究は彼と競うように進んでいった。ところで、研究に要求されるあらゆる技術・知識、それらを扱う経験値やセンス、そして頭の良さでも、准教授は後輩に「勝っている」と確信していた。何もかも自分の方が上じゃないか。素直にそう思っていたという。▼ところが研究報告のたび、研究は後輩の方が進んでいくのだった。どうしてか、ほんとうにわからなくて、ついにしばらく後輩の観察を決め込んだ。そのうち自分との決定的な違いがわかってきた。単純なことだった。自分が斬新な考えを進めているあいだ、後輩はたったひとつのアイデアに取り組んでいたのだ。手を動かして。
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