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そこにないものを見せるのがイリュージョンなら、そこにあるものを見せるのがアリュージョンである。引喩と訳されることの多いアリュージョンだが、語義的に同源でないとはいえ、私はこの言葉にどうも喩という漢字よりリュージョンという響きに濃いニュアンスを見る気がする。見える人には見えるし、見えない人にはなにも見えない。そういう性質のものである。前提された知識や伝統を持たない人には、そこに言及のあることさえ気がつかない。▼引用・言及はなんでもそうだが、アリュージョンも巧くやらねば単なる剽窃である。技法としての我が国の代表的アリュージョン「本歌取」も、正式な表現技法として認められることもあれば、「盗古歌」と言われ批判に晒されることもあった。三十一文字のうち半分以上まったく同じ字面の歌を見せられたら、戸惑う気持ちもわかる。だからこそ、そこにあるものをどう魅せるかが技になる。人に我を忘れさせる幻視の力が要る。
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