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彫刻や盆栽のように、足し算を許さない芸術はいくらでもあるが、引き算を許さない芸術というものはあまり聞いたことがない。絵画はそうだろうか。しかしこれも、材料の都合で仕方なく足すことしかできなかったという気がする。たとえばCGの世界では、いくらでも引き算の修正が許されているだろう。▼けれども足し算は不思議と好まれるようだ。とんとんとならんだ四分音符がひとつの白玉に置き換えられることと、塗りつぶされた超絶技巧に化けることのあいだに編曲としての本質的な違いはないが、どうも人は墨を入れたくなるらしい。変化がわかりやすいからだろうか。▼引き算、引き算と、私はつい言いたくなる。もちろん引き算がすべてじゃない、きっと足し算の美学も、もしかしたら掛け算や割り算の美学もあるのだろうけれど、私にはどうも何かの美しさというものは、漠然とした表現からいらないものを取り去ったあとに立ち現れる風姿と感じられるのである。
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