400
Post/Edit Page
ウェブの普及により、他人を批評するという行為は極めて一般化した。そこにはもう批評言語の混乱というような文壇的問題もない。批評は日常の言葉で語られ、日常の出来事と一緒にブログの一角へ貼りつけられる。感情的な反応と分析的な反論がコメント欄に入り交じる。来訪者がブログの著者に噛み付けば、別の来訪者が横槍を入れて、口角泡を飛ばす侃々諤々がはじまる。誰もが自由に何かを論じている。▼しかし一方で、ひとつだけ出来なくなったこともある。それは恐らく、批評としての「何も思わなかったという意思表明」である。見たもの聞いたもの読んだものへの批評を求められて、「何の感慨もなかった」と切り出したきり後へも続かず切り上げる、こういうことのできる人はもうほとんどいない。何も言わなければ沽券に関わると思っている。そうして、沽券に関わることを言うのも嫌だからと、黙る努力と喋る努力のあいだを彷徨っている。そういう混乱はある。
pass:
Draft