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グーグルメールは世界中の衝撃だった。いまでも憶えている。それまでウェブメールといえばとにかく容量が少なく、すぐに整理を迫られる使い勝手の悪いものだった。メールの主役はまだまだプロバイダメールだった。どこのフリーメールも容量を増やそうとメガバイト単位で苦しんでいたそのとき、どうしてひとりグーグルメールだけが、数ギガバイトという破格の容量を提供できたのだろうか。▼それは現実的なギャンブルだった。グーグルメールがサービス容量を提示したとき、もし利用者の全員がその容量を一瞬にして使いきれば、グーグルのサーバーはパンクしていただろう。しかし「そんなことは起こりえない。ユーザーがメールを溜めていく速度よりも、単位容量あたりの価格下落の方が早いだろう。」グーグルはこう読んだのだった。ストレージの値段は下がりつづける。これからは大容量の時代だ――こういう認識は誰にでもあった。無かったのは、ただ洞察である。
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