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努力はすればするほど不足を感じる。経験はすればするほど満足を感じる。そういう性質を持っている。だから大人になるにつれ出来ることが増え、経験の味を覚えてしまうと、なかなか努力に戻って来られない。そうしてわかったような顔で「何事も経験だよ」などと言い出すようになる。▼人間、たしかに何事も経験がモノを言う。ただし、何事も経験だよ、と言っているうちはなにひとつ身につかない。相応の努力が先立たなければ、ほんとうに有意義な経験は得られないからだ。満足を追い求めれば追い求めるほど、真の満足から遠ざかる。ひとつの逆説である。▼努力する才能。変な言葉だが、もしそんなものがあるとしたら、それは不足を愛せる才能だろう。足りないと感じることに幸せを感じられる人は強いのだ。「及ばざるは過ぎたるより勝れり。」不満、不平、無念――そういう感情のうちに生きることが嫌になったら、たぶん二度と努力することは出来ないのである。
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