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あの人は文学者というより……という冠で語り出される文学者たちの中で、私がもっとも敬愛するのは吉村冬彦――寺田寅彦である。大学生になりたての頃、あまりに長い夏休みに茫然として、硝子越しの真夏日を背中に浴びながら、ソファに足をもたせた酷い恰好で随筆集を読み耽った。とにかく字が小さかったので、目の悪い私は散々苦労して読んだ記憶がある。それ以来読み返していないのは、活字の大きさが悪いのだ。▼随筆集も人に貸してそれきりになってしまった。それも含めて、いまふたたび寅彦を読み直したいと思っている。ところで当時はまだ貧乏学生だったから、新装版が出たばかりの高級な全集などとても手が出なかったのだが、今なら古本で六万円程度に落ち着いているところ、給与の恩恵もあって買えないことはない。それを小一時間悩んでいる。今日の忘年会で同僚が明日、神保町へ鏡花全集を買いに行くと言っていた。それに比べれば、安いものなのだが。
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