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クリアランスセールでコートを買う。高島屋の紳士服コーナーを延々歩きまわって、店を決めたあとも片端から袖を通していった。値段に誑かされたくはないので、値札は見ないで着ていくと、これとこれとこれがいい、と並べていったものはやはり金額が上から順という次第。「お洋服では無駄にお値段を頂戴しているということはございません。」とマネキンさんが自信を持って言うのも頷ける。▼着心地とデザインと値段がわかっても物色を続けてしまうのは、貧乏性や優柔不断というより本屋で本を見繕っているときの感覚に近いと思う。同じ本でも角川文庫と岩波文庫で装丁が違うように、同じようなカシミア100%のコートでもブランドによって何かが違う、その何かを見極めたくてうろうろしているのだ。たぶんどっちを買っても満足度に大差はないのだが、それでもハズレを引きたくない一心で、見究めた挙句の選択というのは、本人には気持ちのいいものなのである。
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