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創作者って、満たされると消えていくものじゃないの。認められたらもう、それだけであとが嫌になっちゃうところ、あるんじゃないの――。ある日の午後、助教のひとりがこう言った。その日の天気と、助教の不思議そうな表情だけよく覚えている。▼以来「満たされたいと願いながら永遠に満たされないことを愛せること」が創作者の適性だと思わされる出来事になんども出くわしてきた。このことは少しずつ真実として私の肚に据わりつつある。ちょっと創作に手を出してはやめていく人が多いのは、飽き性だからでも諦めたからでもなく、案外すぐに満たされたからかもしれない。▼丹羽文雄は言う。「作家ッちゅうのは何か一つねえ、泣き所をもっていると。つまり、金銭で非常に苦労するか、肉親関係とか恋愛とか、何か一つ泣き所を持ってるもんだッちゅうんだ、作家はね。何一つ不自由もないちゅうところからは、作家ッちゅうものは生まれて来ないッちゅうんだなあ。」
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