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Veni, vidi, vici. 来た、見た、勝った。世界中で知られる代表的な「省略法」の名文である。省略法の中でも特に接続語省略あるいは断叙法と呼ばれるレトリックで、ムーナンの『言語学辞典』によれば、その定義は「等位関係にあるふたつ以上の語彙的ないし統語的要素のあいだに形式的連結が欠けていること。」欠けていることでリズムが乗る。カエサルの手紙の簡潔は、まさに戦勝の勢いである。▼アリストテレスは『弁論術』で、この手の省略法を「とりわけ話し言葉の効果のための技法」とし、書かれた言語表現にはあまり適さないとした。たしかにこうしたスタッカートが最大限に効果を発揮するのは演説だろう。しかし小説のような文章中でも大いに効果を発揮する技法であることは、数多くの好例によって知られている。圧倒的に書き言葉の多い現代は、古代ギリシアとは事情が違うようだ。書かれた文章は暗黙裡に音となり、著者の言葉となり、演説となるのである。
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