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旧暦八月十五日は十五夜。旧暦九月十三日は十三夜。月の鑑賞にうってつけと言われる伝統的な二日だが、江戸時代の遊廓などでは、十五夜か十三夜のどちらか一方しか月見しないことを「片月見」と称して縁起の悪いものとし、そのような客を嫌っていたという。そうすると客の方も遊女に嫌われたくはないので、十五夜に招かれたら十三夜にも来なければならない。だから、八月十五日に上客を誘うのは常套手段であった。▼かえって縁起の方が上客のリピートを狙って生まれた風聞かもしれぬ。こうした縁起と習慣は、いつもどちらが先か定かなことはわからない。どれほど多くの神仏に関係する縁起や迷信が、ただ夜を明かして遊びたいためのこじつけとして考案されてきたことか。人は古代の昔から自分たちの欲望について、神や世間に対する言い訳を縁起に託してきた。それを担いで合法的に気持ちのよい生活を送ることは、処世に長けた人間のひとつの技なのかもしれない。
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