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あらゆる物語には上昇と下降のタイプがある。上昇の物語は、誕生と発展のストーリーである。そこでは主人公は自分や家族を知り、社会を知り、世界を知り、神を知る。足りないものを補いながら成長していく姿は、いま同じ局面に立たされているかもしれない読者を勇気づけてくれる。物語はきっと、ハッピーエンドで終わるだろう。▼対する下降の物語は、剥落と終焉のストーリーである。主人公は神から、世界から、社会から、そして家族や自分から疎外されていく。滑りつづける奈落への道である。結末は恐らく悲劇になるだろう。そこに希望や憧憬はない。ただ、読者の心に現実を思い出させてくれる。一種の刺激剤である。▼人生、山あり谷あり。そういう起伏に合わせて、読みたい物語のタイプも変わってくるし、書きたいものも変わってくる。私は喜劇作家、悲劇作家などと決めつけないほうがいい。小賢しいレッテルではどうにもならない、抗いがたいリズムがある。
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