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「だぁれもだぁれも知らない、お前の名前はトム・チット・トット!」語感と耳触りのいいフレーズは、子供の頃に読んだのを覚えている人もいるかもしれない。昔、絵本が流行したイギリスの童話である。モチーフはグリム童話の「ルンペルシュティルツヒェン」と同じで、「なんでも願いを叶えてやる代わりに、はじめて生まれた子供をもらう」という小人の悪魔との契約を「名前を当てる」という行為によって解消する物語である。▼ルンペルシュティルツヒェンが名前を言い当てられてしまったのは彼の落ち度だが、名を知られたくらいで悪魔の契約が破棄されてしまうところからも、童話誕生の当時、名前というものがどれほど重視されていたかがよくわかる。召喚の魔術にも、手引きを見ると、しつこいくらいに対象の名前を唱えるものが多い。悪魔にとって名指しされることは支配されることに等しかったのだ。名付けるということは従えることである。無論、作品も然り。
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