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「地震があるといやな風が吹くよね。どうもこれが嫌いでさ。」金曜日の帰り道、同僚の一人がこう言った。たしかにそのとき、強くも弱くもない、なまぬるく、どこか遠くへ吹き抜けていくような風が巻いていた。そのうちにわかの雨が降って、からっと晴れて、変な色の空になった。雲の形もどことなく変わっている。▼気のせいと言われるかもしれないが、まるきりヨタ話とも限らないだろう。もしもこの世が決定性有限オートマトンのようなものなら、地震は自然界へのとてつもなく巨大な入力であり、状態にどんな変化が起きても不思議ではない。地震によって空や雲や風の気配が変わる可能性は、風が吹いて桶屋が儲かるよりは高い気がする。▼いろんなものが変わった。社会はもとより、ご近所さんの動向も変わった。ふだん見ないような人が近くのスーパーに並んでいたりしないだろうか。もしかしたらその人は、数年ぶりに始発終電生活から解放されたのかもしれない。
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