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適当に合わせることがなにより得意の聞き上手や、言葉のあちこちを弄り廻して反駁するのが生業の論争家は、喋る人間を満足させたりへこませたりすることはできても、黙る人間をどうすることもできない。そうして仕方なく、思想の陳述をやめた人間はその場にいないかのように振る舞う。「……」でしか沈黙を表現できない世界には、ひときわそうした悪癖が染み付いているようだ。▼書き込みと呟きの渦で生活していると、誰が何を喋っているかばかり気にしてしまいがちである。しかし、言われていないことにも十分注意を払ってみよう。そこに居るが、誰にも何も言うつもりはない、そういう人間の頑なな沈黙には、しばしば単なる蚊帳の外や無関心以上のものがある。彼らは沈黙することによって誰かに何かを伝えようとしているのだ。「饒舌に聞き手が必要であるように、沈黙にも相手が要る。そして恐らく饒舌よりも相手を選ぶものだ。」沈黙を拾える耳目を持ちたい。
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