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「人々は絵を見て、まるでほんとみたいだと感心する。その癖ほんとを見て、まるで絵みたいだとうっとりする。小説だって同じ事だ、小説がまさしく小説にみえては皆んな退屈する。現実が、何等かの意味で小説にみえなければ、身がもてないのである。」▼小林秀夫は「小説の問題II」でこう言っている。指摘されているのは、《ほんもの》と《にせもの》のインタラクティビティである。ある小説について、現実性や具体性を云々することは、実は現実の小説的な要約を語るのと同じことなのだ。小説的錯覚。しかしどちらが錯覚か、わかったものではない。▼「現実を眺めて、これを小説に要約しようとする。小説を読み読み、これを現実に還元しようとする。この二つの精神傾向から生ずる紛糾、これも亦私達の逃れられない微妙な愚劣の一つだ。」いろんな読者によって小説が読まれている如く、現実が読まれている。そういう理解の上に小説がつくられるという構造である。
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