400
Post/Edit Page
『婦系図』が鞄の底に眠っていたので、帰りの電車、何とはなしに読んでいた。久しぶりに泉鏡花の文章を読む。相変わらず綺麗だなと思った。目で追い頭で考えると急に進まなくなる、ただ口に出さないまでも頭の中で音読しているとすらすら入ってくる、読みだすと読めなくなるという、奇妙な文章。▼「それが味さ。」――しかし、闇雲に難解という評価もそろそろ免れにくくなってきた。言葉のひとつひとつがあまりにも現代人の生活とかけ離れていて、すらすら読んでも音を味わう以上に情景が味わえない、味わうためにはほとんどそのためと言ってもいいような単語への理解が要る。ただ美しいことだけがわかるというような、無理解な音楽への感動めいたところに落ち込んでいく。▼最寄り駅について本を閉じたとき、どうも他言語の上等な小説を読んでいる気分に近いと思った。ふつうの読書とは別の遊びだと感じた。好きか嫌いかはともかく、やはり鏡花は特別なのだ。
pass:
Draft