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はじめは無心にやる。そのうちいろいろ考えるようになる。考えて悩んで、ときどき道を間違えながら、少しずつ文体が出来てくる。そうしてこれはと思う自分の文体が見つかったとき、ようやく考えた甲斐があったと思って、ほっとして無心になる。たいていの修行の道はこんな心のループを辿る。▼いつまでもぐるぐるまわっていればいいのだ。ところがそこには危険な出口がふたつある。ひとつは、考えすぎて思考に囚われ無心に戻れなくなること。もうひとつは、素朴やわかりやすさの味を占めてしまって、無心から出られなくなること。▼あっさりとそれなりのものが生み出せるようになったとき、いつわりの自然体に逃げたくなるものだ。「ある作家の心境がいよいよ磨かれて、作品を作ろうとする時材料に贅沢を言わなくなる、ごく平凡な人物、些細な情景があれば足りるという風になる、だがこれは又良心はあるが才能は貧弱な多くの作家の辿るあり来りの道でもある。」
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