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アメリカ史上最高のプレイヤーとも評されるプロゴルファー、ベン・ホーガン。現役時代は敵なしと言われた腕前で、飛び抜けて練習熱心でもあった彼は、あるとき本屋に頼まれてゴルフ上達のための理論書を書いた。長年の実地経験から編みだされたスイングの秘訣は、余すところ無く文章のうちに凝縮された。書籍は大成功であった。▼ところがこの理論書を書き上げてからと言うもの、彼自身の球のほうは、ぱったり巧く飛ばなくなってしまった。思いがけないスランプ。立ち直るのに、一年以上もの時間がかかったという。なんとも皮肉な話である。▼それでも彼は自分の仕事に満足していたらしい。理論は理論として正しかったのだろう。ただ肉体の修練によって培った動作の真髄が、理論的な分析のメスを摺り抜けてしまったのだ。ゴルフだけではなくあらゆるスポーツに、あらゆる「達人」を持つ遊戯に起こりうることでもある。アタマとカラダは、どうにも仲良くしない。
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