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人の話に耳を傾けることと、自分を貫き通すこと。修行者はいつも、この相反する概念の線引きに苦心している。どこで耳を澄ませばいいのか、どこで驀進すればいいのか。そうしていつか懊悩に疲れたとき、誰の言うことも聞かないエゴイストか、他人の意見ばかりに振りまわされるパペットになる。そんなのは御免だ。だから私はケジメのつけ方を、もうずいぶん前から変えていない。要するに技術と美学の区別だと思っている。▼「言いたいことが言えてないよ。」こういう指摘はいくらでも素直に聞きたい。言えてないのだから、言う方法を知らなければならない。土下座してでも教えを乞う。けれども「そんなこと言ってどうするの?」と言われる筋合いだけはないのである。言いたいことに突き動かされているはずの自分が、ここを譲ったら何が何やらわからない。もっとこういうことを言わなくちゃ。そんなふうに諭してくるのは、十中八九、良き師ではなく詐欺師である。
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