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ピーター・ドラッカーは生涯に数えきれないほどの文章を書いた。数十冊、一万頁をゆうに越える膨大な著作のうち、いったいどれを読めばよいのでしょうという読者からの質問にはいつも悩まされたという。それでも敢えて――「数多の作品のうち、もっとも誇れる一作はどれですか?」若き記者に訊かれて、齢九十四のドラッカーはいささかも躊躇わずこう答えたという。"The next one. "▼いかにもドラッカーの人柄が窺える逸話だが、このエピソード、私は以前、チャップリンのものとして聞いたことがある。彼もまた自身の最高傑作を尋ねられたとき、次回作さ、と気さくに答えたそうだ。恐らくどちらがどちらの剽窃でもあるまい。常に新しいものを求めて創りつづけ、学びつづける人にとって、それは当たり前の感覚なのだろう。集大成、金字塔など、周りが勝手に拵えるものに過ぎない。そんなものが過去に見当たらなければこそ、創作者は驀進しつづけられるのである。
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