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時に「めき」がついて「ときめき」、花について「花めく」という言葉もある。他にも古めいたり、夏めいたり、めくるめいたりする。「めく」は、何かが特によく見える様子を表す接尾語だ。肌でも耳でもなく、目の表現である。見ていて目移りしてしまうほど、次から次と色彩や感覚が目に飛び込んでくる、そういう状態が「めいている」ので、夏めくというからには、蝉が五月蝿いのではない、うだるように暑いのでもない、ただどこもかしこも、夏としか思えない光景に満ち溢れているはずだ。▼だから、風景描写をひとくちに済ませたければ「めく」は便利すぎるほど便利な表現である。ただ光景を説明したい場面で、精密な書き込みに意味もなく、描写に仮託したい思惑もなく、なにより読者と作者のあいだにイメージの乖離がないと信じるなら、夏めくという言葉ひとつで十分に夏を感じてもらうことも出来るのだ。文字を連ね、描写めいていればいいというものではない。
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