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執筆に関するジョン・D・マクドナルドの言葉は、いつもまっとうで説得力がある。名言というほど名言らしく見えなくても、必ず素朴な実行的価値がある。たとえば、こんなことを言う。「読者というものは、本を読んでいるということを意識させられるのを好まない。あちこちに散見するきらびやかな文章、革新的で手のこんだ構造、ありえそうもない主観的な独白など――これらすべては『君、わたしが書いているのを見たまえ』と言っているようなものである。」▼言って終わりならただのまっとうに過ぎないが、終わらないところに彼の非凡がある。曰く、こうした作者の押し付けを回避する解決策として、筆を擱いたら自分の作品を「誰か別の人間が、君のスタイルを下手に真似、君の欠点を誇張して書いたもの」と見做して読んでみよ、というのである。実に目覚しい方法だ。名状しがたい不快感が払拭するまで推敲するには、相当の時間がかかることに気づくはずである。
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