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千鳥足で歩くお爺さん方を避けながら、いつもより賑やかな繁華街を歩く。いつもより賑やかなのは、目にも耳にも本当にそうなので、月末の金曜日かと思われるほど。気のせいではあるまい。濃紺のスーツでいかにも新人らしい社会人の一団が「笑笑」の前で大声をあげている。どこからでも聞こえてくる間歇的な哄笑。道の左右に点々と控える勧誘の黒服。列を成す大通りのタクシー。▼隣の芝が青く見えるのも、我が庭があればこそだ。思うに他人の幸福を羨めるのは、それなり幸福な人間に限るのであり、不幸な人にとって幸福な人々を眺めるのはただつらい。逆もまた然りで、私怨なきシャーデンフロイデなど穿ち過ぎたまやかしに思われる。だからこそ明暗分かつ特別なときには、明と暗は静かに棲み分けるのだ。皮肉で言うわけじゃない。そういう棲み分けができないところに、悲劇は起こる。今日、街は明かりにあふれていた――それ以上なにを言う必要があるだろうか。
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