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「決して巧いとは思わぬが、なんとなく惹かれる文章がある。むろん、巧くても一向にかまわない。しかし、巧いから惹かれるというのではいかにも底が浅い。巧さは知性のレベルであり、知性のレベルを出ない。だが、わけもなく惹かれるのは人間存在がまるごとまいることなのだ。」▼名文とは人をまるごとまいらせる文章だ、と中村明は言う。人目を引く文章、これは注意を向けさせることであり、知覚のレベルに過ぎない。人を引きつける文章、これも人間的興味を喚起することであり、まだ認識のレベルである。まるごとまいるというのはそういうことではない。▼感心を煽り、興味を惹く、そんな感覚や知性のレベルを超えて名文は在る。人はあの技術やこのテクニックに惚れ込むわけではない。名文はもっと全人格的なものだ――。こういう論調は、最終的にその魅力ある何かを「雰囲気」と呼ぶしかない。品格でも風格でもなく、ただその文章が発散している空気である。
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