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俳人、藤田湘子は初学者に俳句を教えるとき「はやく一千句作りなさい」と説いた。面食らう数だが、毎日一句でたかだか三年半である。同じ三年半なら月に三十句を目指してもよい。とにかく千に達すること。「千句も作れば俳句という器がどんなものか、おぼろげながら輪郭が見えてくるものです。そうすればまた、俳句の作り方にも楽しさや欲が加わる。」▼運動部の走りこみだ。バットの素振りと同じことだ。ピアノのハノンだ。画家のクロッキーだ。多作。駈け出した初学者の頃は忠実に守れても、いい物を創ろうという意志と板挟みになる時期がつらい。「もっと狙い澄ましてもいいのでは……。」しかし寡作という言葉は、初学、初心の人にはまったく縁のない言葉だ、と彼は言う。「寡作、多作どちらがいいかという問題は、実績ある人が論ずること。作句の初めの数年は、ただひたすら作る。とにかく作るということが大切なのです。」つらくても寡作には逃げるまい。
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