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言葉がどれほど記憶を左右するか、証明を試みた心理学の実験がある。数グループからなる被験者に車同士が衝突する事故の映像を見せ、その後証言を集めるのだが、このときグループごとに質問の言葉のごく一部だけを変えるのだ。車が「激突したとき/当たったとき/接触したとき」――車はどれくらいのスピードで走っていましたか。また、窓ガラスは割れましたか。▼回答結果は大きく分かれた。速度への質問は「激突」のグループが平均時速65キロ、「当たった」が時速55キロ、「接触した」が時速52キロだった。また窓ガラスへの質問では、割れていたと答えた人が「激突」では三割以上に及んだが、その他のグループでは一割前後に収まったという。実際の映像では、窓ガラスは割れていなかった。たったひとつの動詞を変えるだけで、記憶はいともたやすく曖昧になる。法廷証言の信憑性を検証する実験としては、設定にも結果にもそれなりの説得力があるだろう。
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