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ニューヨーク市大停電のとき、ニューヨーク・タイムズ紙は緊急に地方の印刷所で次の日刊を刷ることに決めた。ふだんと変わらぬ大量の発刊要求。応えるためには、印刷は一刻を争う。▼ところが与えられた猶予の時間が半分を過ぎても、印刷はまだ始まってすらいなかった。編集長とそのアシスタントは目下「重要な問題」をめぐって議論を交わしていたのである。つまり、ある単語について「ハイフンを入れるかどうか」で意見が分かれてしまったのだ。揉めに揉めて、結局、刷られた部数は予定の半分だったという。▼本当かどうか定かではない逸話の類だが、これはけっして愚かしい類の話ではない。部数を半分に減らしてでもハイフネーションを論じなければならなかったのは、ニューヨーク・タイムズ紙がアメリカの文法模範として機能している自負があればこそだ。そんな些細なことより早く印刷機を回すべきだという軽率な判断を下すことは、必ずしも速断力ではない。
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