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「いにしへより聖賢はことごとく貧賤、何ぞ況んや我輩の孤にして且つ直なるをや。」これは作者の鬱々たる心情だが、貧しくも正しいと信じる我が身を過去の偉大な人々になぞらえて安心しつつ、一方で「貧すれば鈍する」という真理と折り合いをつけるのに苦労する、そういう心は世に溢れている。貧乏の方が圧倒的に多く、鈍している人間の方がやはり多い、そんな昏い符号は何をか言わんやだ。▼「労働は貧乏という原罪に対する贖罪だよ。俺は貧乏という原罪を背負ってないから働く必要がないんだ。」こういう実に印象的な台詞を現代の貴族から聞いた。面白い言い方をすると思った。原罪と言われては、これはもう太刀打ちする術がない。必要がないと断言しつつ、事実、必要のない人間にかける言葉はないものだ。聞いて私は笑ったが、皮肉で笑ったわけではない。純粋に「そりゃあそうだ」と思って笑った。こういう奴は鈍することもないだろうと頼もしくさえ思った。
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