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「そう、slithyは滑らか(lithe)で粘っこい(slimy)ってことさ。……まるで旅行かばんのようだろう?」▼こうした合成語が「かばん語」と呼ばれるようになったのは、『鏡の国のアリス』作中におけるハンプティ・ダンプティの台詞が元だと言われている。「ふたつの意味が、ひとつの言葉に詰め込まれているから」旅行かばん。これだけだとややピンと来ないものもあるが、ときにはもっとたくさんの言葉を混ぜあわせてつくることもあるから、ごちゃまぜの感じを出すにはちょうどよい。▼言葉には、表しうる意味の限界がある。こうした言葉の「外郭」がときどき作家を真剣に悩ませる。殻同士がぎりぎり触れ合う程度の、微妙な二単語の中間が欲しいとき、ふたつとも記して置くという妥協が出来なければ、かばん語を使わずにはいられないのだ。誰だか忘れたが、かばん語を「言葉のアンチエイリアス」と表現した人がいた。これは巧いことを言う、と思った記憶がある。
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