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今日、休憩がてら会社の屋上に出ると、どこから迷い込んだのか白猫が佇んでいた。これは珍しい客だと思って近寄ると、さっと逃げる。寄っても寄ってもすぐに逃げてしまうので、とうとう顔もよく見られなかったが、時刻は午後五時頃、暗みはじめた雲空の背景には遠巻きの姿が似合っていた。▼猫のことは気にせず、屋上へ上がる非常階段の真ん中に腰掛けて、しばらく雲を見ていた。東西南北、ぐるりと見回すと、どこの雲もまるで形が違う。遠くの群雲は微動だにしないのに、その手前にあるらしい薄い雲の層は手の届きそうな距離を滑るように動いていく。遠方は暗く、雲間は明るい。頭上は雲のあいだに無数の青い亀裂が走ったようになっている。背後にこんもり、塊の雲がある。▼僕は雲がいちばん好きだ、と言うボードレールも、いつかはきっとこういう変幻自在の空模様を見ていたに違いない。自分には雲さえあればいくらでも詩想が湧いてくると感じたことだろう。
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