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昔話になる。研究室に配属されての歓迎パーティー、宴もたけなわになり、それぞれ順番に自己紹介をしたときのこと。なんとも凄そうな先輩がいた。▼話によると彼は、なんとか会を主催し、なんとか委員長として活躍し、いまもなんとかチームでリーダーシップを取っているという。次々と名前の挙がる人脈も凄そうで、持っている資格も凄そうで、困ったらぜひ自分を頼ってくれ、と結んだその自己紹介はいかにも凄そうだった。なんだか凄そうな先輩だな、とうわさ話をしたものだ。▼「しょうがないな、俺がなんとかしてやるよ!」快活に携帯電話で話す声が思い出される。本当に、思いだせば思い出すほど、そういう言葉をよく聞いた気がする。けれども、なぜ、誰が、何を彼に頼ろうとしているのかは、いつもわからないのだった。▼そうして彼は凄そうなまま研究室を後にした。私も卒業した。何もわからずじまいである。凄そうであることは案外簡単なのかもしれない。
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