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突然の大雨に最寄り駅で立ち往生していたら、「こんばんは」と背後から話しかけてくる婦人がひとり。イヤホンを外し声の方を見ると、以前教えていた生徒の母親だった。××の母です、と紹介した名前のところは雨音に掻き消されて聞こえなかったが、覚えているので問題ない。▼車で送りましょうか、と言う。次の駅まで足を運んで買い物をして帰ろうかと思っていたので遠慮すると、それなら傘を差し上げます、とビニール傘を手渡された。これはどうも、助かります。ありがとうございます。それじゃあ車まで一緒に行きましょう――。車まで、借りた傘を貸して別れた。▼偶然の出会いに感謝しつつ、靴だけ濡らして歩きながら、こんなことを考えていた。同じ最寄り駅を利用していて、最後に会ってから二年間、恐らくいちども見かけなかったわけではあるまい。ただ雨に困る姿をきっかけに声を掛けたのだろう。そう思えばどこで誰に見られているか、わからないものだ。
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