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絵の練習がしたい、と同僚が言い出して、その場で面白い話を聞いた。曰く、彼は昔も絵の勉強をしたことがあり、そのときは人の顔など良さげに見えるくらいには上達したのだが、いかんせん表情に生気がなく、誰のどんな表情を描いても描いた自分が気に入らない代物になるのでやめてしまったという。表情に生気。その壁がどうにも超えられない、というのだ。そこで、もうひとりの同僚がこんなことを言った。「絵の巧い人は、表情は形で描こうとしたら駄目だと言ってるね。表情は光で描くものだって。」▼どんなに可愛らしい、凛々しい、活気あふれる表情でも、下からライトを当てると不気味に見える。表情の陰翳は文字通り光と影で生み出されるのであり、形ばかり正しく描いても生気は宿らない。こういう話である。なるほどこれはたしかに意識しなければ難しい壁だろう。いつも表情を見ているこの世界と違い、紙の上では意識しない限り光は差していないのだから。
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